大学入試改革の意味するもの
文部科学省が中央教育審議会の答申を受け、6年後の実現をめざし大学入試改革に本格的にとりかかろうとしています。内容を詳しくみていきますと、今回の改革は単なる入試改革ではなく、グローバル社会を生きていく子どもたちが身につけるべき能力をどのように育成し、どう評価、推進していくかという教育全般にかかわる重要な改革であることがわかります。私たち自身も小手先の戦術論ではなく、戦略的にまたは長期的、根本的にとらえて日々の子ども達の教育にあたることが必要であると考えております。
そもそも現在の日本の大学入試のように各大学が独自の入試問題を作成し、運営していく形態は世界でも稀でOECD加盟国の中でも日本を含め2カ国しかありません。ほとんどの先進国がセンター試験のような全国共通テストで基礎学力を図る一方、高校での成績や課外活動、推薦状や論文等を通して多面的に人物評価し、生徒を選択しています。ハーバード大学やMITなどではSATや学校の成績に加え、潜在的な伸びる力や人間性も重視しながら入試担当専門のアドミッションオフィサーたちが審議に審議を重ねて絞り込み、大学に貢献できる人物かどうかを判断していきます。こうして選ばれる生徒たちの昨年の合格率は実にMITが8%、ハーバードが6%です。また、オックスブリッジでは共通試験でオールAがあたり前の生徒たちが適性テストを受け、論文を提出し、複数回にわたる厳しい面接を乗り越えて選抜されます。つまり世界のトップレベルの大学では、一点刻みの試験のみで合否を決める「顔の見えない試験」ではなく、成績はもとよりあらゆる角度から人物評価をする「顔の見える試験」を通して優秀な人材を確保しているのです。
この度の改革は、大学が抱える入試自体の改革のみならず、同時に大学のグローバル化を推し進め、ひいては高校段階での学習内容も大きく変革していく可能性のあるものであると私自身は高く評価しております。様々な課題はあるでしょうが、何とか実現してほしいと思います。さて、それに向けて子ども達はどのような能力を養っていく必要があるのでしょうか。そこでは幅広い知識や多様な経験を基本にした「思考力」「判断力」そして「表現力」が求められるようになるでしょう。私たちは小・中・高と育っていくそれぞれの段階で、子ども達の好奇心や意欲を伸ばしていけるよう配慮し、工夫していくことが重要になります。私自身の経験では、教育学部の付属校では、知識のつめこみ教育よりも子どもたちの学ぶ心を育てることに注力し、将来にわたって物事に興味や関心を持っていく方向に導く教育が実践さえているように思います。そして、さらに表現力を伸ばすことに力を入れる教育がこれからの重要なポイントになるでしょう。学校選びの際のご参考になれば幸いです。